案の定、始発の乗客者数は少なかった。電車の連結部に一番近いところに陣取ると、京都駅に着くまでは外の景色をぼんやりと眺めていた。 そのときのことを私はほとんど覚えていない。一段と夜の闇が深くなったかと思えば東の空から幾層もの幻想的な色のヴェ…
午前四時半の三ノ宮駅のホームは閑散としていた。大阪方面にしろ、姫路方面にしろ、一つのドアに人が一人いるかという具合で、まるで墨汁で塗り潰されたかのような夜明け前の空が、これに拍車をかけていた。 私は一人で暇だったので、輪行袋を内から張り裂か…
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